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柳社長×中竹取締役 特別対談

ジンテック つなタイ-対談

早稲田大学ラグビー蹴球部監督を経て、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。株式会社TEAMBOX代表取締役として数多くの企業の組織・風土改革、リーダーシップトレーニングに手腕を発揮されている中竹竜二氏。2015年4月から社外取締役としてジンテックの組織・風土の改革にも深く関わってこられました。

2020年4月に発表されたジンテックの新しい企業理念を軸に、柳社長と中竹氏がこれからのジンテックのあり方、目指すものについて伺いました。

ジンテックの変化と進化

―中竹さんは取締役に就任されて5年ぐらいと伺っています。

柳:そうですね。出会ったのは十年以上前ですが、ジンテックの役員に入ってもらってからは5年か6年か。

中竹:そう、5年ですね。

―中竹さんが入られて、社内の雰囲気はどのように変わってきましたか。

柳:結論から言うと、意図していたとおりの変化が起きていて、そこはすごくありがたいです。変化としては、社員が失敗を恐れなくなってきていますね。社員が失敗をしたところで会社はつぶれませんし、失敗も含めて挑戦することによって学ぶほうが大きい。そういうことを許容できる組織になってきていると感じています。

―中竹さんからご覧になって、入られたころのジンテックはどんなイメージでしたか。また、そこからどんな変化がありましたか。

中竹:真面目で物静かな感じが強い印象としてあります。変化で言うと、以前よりだいぶみんな自分らしくというか、思い切って「ぱっと」発言したり行動したりするようになってきたようにみえます。

新企業理念を羅針盤に目指すもの

―今回、ジンテックは企業理念を新しくされましたが、そこに込められた思いや背景をお聞かせください。

柳:ジンテックの社員は、お客さまが困っていることや願いを「何とかしてかなえたい」という強い思いを持っています。ここ数年、企業カルチャーの浸透活動をしてきたこともあり、おかげさまでお客さまから“ジンテックらしさ”を支持してもらうことが増えてきました。ただ、ジンテックはどんどん成長していて、これまでの理念がフィットしない部分も出てきていました。ベースにあるのは「ますますお客さまに対して貢献していく」というもので、これは過去も未来も変わりませんが、環境の変化や時間の流れとともに自分たちが培ってきたもの、あるいは学んできたものを融合させ、さらに進化していくタイミングだと感じ、刷新することにしました。

―新理念では「価値共創」が一つのテーマとなっています。「価値共創」を推進し、誘発させていくために取り組んでいくべきこととは何でしょうか。


中竹:ジンテックでは“人と人とのつながり”、もしくは“つなぐこと”がサービスコンセプトです。コンセプトが人と人とのつながりなのに、社内がしっかりとつながっていなければ説得力がない。そういう意味では真面目なんだけど、ちょっとおとなしすぎるなと。つながりは”動と動”、揺れ動いて生まれていくものだから。まずは社内で言いたいことを言う、しっかりと言語化していく必要があって、僕はそこをみなさんと一緒に追求してきました。アイデアを持ち寄ってディスカッションすることで、新たなシーンが生まれる。それこそが「価値共創」。お客さんとのやりとりはもちろん大事ですが、「価値共創」を自分達の中で体現してみる。スタート地点はジンテックの中であって、そこが一番重要だと思います。

―今回の企業理念の改定では、ジンテックのアイデンティティの中で言語化されていなかった部分を埋めるような形で再定義されました。新しい理念体系を中竹さんはどのようにお感じになられましたか。

中竹:シンプルで分かりやすいと思います。やるべきことが明確な、立ち戻れる地図になった気がしますね。今までいろんな組織をみてきましたけれども、いい理念があっても具体的に何をやるかがみえない。あるいは具体的なことだけを追求して、理念がみえなくなる。そういうことがよく起きるんです。そういう意味で、その間をつなげられたなと。

―ジンテックの「4つの提供価値」を踏まえて、これから何をどうしていくのか。例えばこれまで以上にイノベーションを誘発していくには、どういったアプローチをしていけばよいでしょうか。

中竹:多くの会社がテクノロジーの進化を中心に考えていますが、裏側では漠然とした不安を抱えています。ですから、テクノロジーだけをイノベートするというよりは、お客さんとの関係をしっかりと見直していくことが大切ですね。「人の力の大切さ」みたいなものを、ジンテックの人たちはニュアンス的に分かっている。テクノロジー推進型のイノベーションではなく、少し昔の形態というか、アナログ的なものを残して、ほかはもう面倒くさくてやらないようなお客さまとのつながり方、寄り添い方ができることがジンテックらしさであり、実はイノベーションなんだと思います。

新型コロナウィルスによって早まった進化のスピード

―新型コロナウィルスによって働き方、そしてお客さまとの関係性にも変化が生まれてきています。こういった状況において、これからのジンテックのあり方、あるいはアクションの取り方はどうなっていきますか。

柳:先日、中竹さんの研修をzoomでやったんです。思いの外「これできるじゃん」という感じでした。対面でなければなかなか伝わらないと言われていますし、実際そういうこともあるんでしょうけれど、当社で言えばこれまでどおり研修は十分できたし、むしろこれまでにないやり方ですごく面白かった。これからは時空間の概念が変わってくると思っていますが、社内でも新しい活動の仕方が必要だということが強く認識されたので、まさにいま模索中です。

―組織という観点ではどうでしょうか。


柳:絆が深まりましたね。うちはドアノブやスイッチなど、人が触る場所のアルコール消毒活動を2時間おきにみんなでしているんです。自分を守ることがみんなを守ることにつながる感覚が湧き、「自分のことはみんなのことだ」という感じになってきて、組織により思いやりが生まれてきている感覚があります。こういった身近なことを通じて、力を結集することや思いやりの組織文化がより強くなっていくんじゃないかな。

中竹:もともとジンテックの組織は、トップダウン型ではありません。もちろん大事なところは柳さんが指針を示し部門長が動きますが、それ以外は意外と自由。むしろ「メンバーがどうやって頑張るか」という風土です。アフターコロナでは、「自分で体を守る」「自分で自分の役割を果たす」といったセルフマネジメント力が必要。多くの企業がリモートワークの難しさを感じている中で、ジンテックが上手くいったのは、「自分で何とかしなきゃ」という風土があったからだ思います。誤解を恐れずに言えば、コロナによる制約によって、さらに進化していく組織だと言えますね。

ワンチームは個々の発信とつながりで生まれる結果論 

―今回新しく作られたスローガンに「ワンチーム」という言葉があります。組織が一丸となっていくために重要なことはなんでしょうか。

中竹:ワンチームは結果論。みんながつながろうと努力した結果であって、「ワンチームになるぞ」と声を大きくしたらできるもんじゃない。一人一人が自分の意思でしっかり発信し、つながりを広げていくプロセスでしか体現できないんです。日本代表チームがワンチームになっていく過程では、ワンチームになるための努力や貢献を全員がしました。監督の中ではジレンマがあって、チームプレーも大事だけれど、スキル向上やコンディショニングもやりたいし、戦略についてのミーティングをやりたいんですね。経営者だってワンチームより売り上げや技術開発を優先したい。でも、もしワンチームを目指すなら、それらと同じ熱量でワンチームになるための活動をやらなければなりません。日本代表チームがすごく良かったのは、ワールドカップ期間中もワンチームになるための時間をちゃんと確保したこと。これは、普通の監督は怖くてできないですね。そういう意味では、ジンテックもいわゆる本業のビジネスではない時間をすごく使っていますよね。

柳:そうですね。


中竹:消毒活動や朝のグループ対話の時間など、掲げたスローガンと実態がかなり近づいてきているので、さらにジンテックらしいワンチームになっていくといいなと思っています。

「幸福追求」企業として何を目指すのか

―新企業理念では「幸福追求」が掲げられました。また、新理念の浸透に向けて作ったブランドブックの最終ページには、柳社長直筆による「ずっとありがとう」という言葉が書かれています。「幸せ」にはいろんな考え方、捉え方があると思いますが、柳さんの幸福感についてお聞かせください。

柳:私の幸福感は、「充実している」ということ。家族や友人との生活と仕事の両方で充実感がないと。仕事に関わる時間は人生の3分の1、あるいはもっとかもしれません。ですから仕事の中にもしっかりとした充実感があってこそ幸福であると考えています。もう一つは「自分が幸せであるようにみんなも幸せである」という循環。私はペイフォワードの考え方を大切にしているんですが、若いころお世話になり、恩返しをしたいと思う人は先に死んでいってしまうんですよね。その人たちに直接恩返しができないのであれば、かつて自分がしてもらったように、若い人たちにペイフォワードしていくしかない。「居酒屋であの時かけてもらった言葉がすごく励みになった」「今でも頭にこびり付いている」ということが誰しもあると思います。「自分も幸せでみんなも幸せ」という循環を、お金だけじゃなく、気持ちやちょっとした行動でペイフォワードしていく。そういう連鎖を次にどんどん送っていくということ。それが私にとっての幸せですね。

中竹:今の話は柳さんから初めて聞きましたが、すごく素敵ですね。「ずっとありがとう」という言葉もペイフォワードですよね。これから先のことはまだ起こっていないけれども、まず先に「ずっとありがとう」と感謝を述べられている。幸福の研究はどんどん進化していて、感謝されるより感謝するほうがより幸福になるそうです。柳さんがご自身の幸せのために先に感謝を伝えるというのはすごくいいことで、感謝されたほうも感謝したくなる。まさにこの循環を実践されているんだなと思います。

―これからジンテックは会社として幸せを追求し、社員一人一人も個人の幸せを追求していきます。そこから視野を少し広げ「幸福な社会」を実現していくために、ジンテックはどういったことができるのでしょうか。また、ジンテックは何をしていかなければならないのでしょうか。対談の最後に、お2人のご意見をお聞かせください。

中竹:何か特別なことというより、今やっていることの延長線上を真っすぐに進み、実現することだと思います。みなさん、どんどん自分の意見を表明し、議論ができるようになってきています。それが部署を越えてさらに活発にできるようになると、社内の幸福度が上がるんじゃないかな。僕は「内側にあるものしか伝わらない」と考えていて、世の中を幸せにしていくためには、まずはジンテックの人々が幸せになることを目指すべきだと思います。そして、それを公言していくことが大切です。

柳:そうですね。難しいのは一人一人がチームとしてどうそれを醸成していくのかで、ここはすごく重要なポイントです。今回、新しい理念を作ることで整理をしましたし、内と外にしっかり目を向けて、充実感を持って進んでいくということが、結果的に人々の幸せにつながると思っています。ここ数年ジンテックの業績は良い形で推移していますが、お客さまにご満足いただいて、社員が幸福感と充実感を得られている証だと思っています。既によい循環があるので、上を目指しながらも”あまり欲張りすぎず”、この循環を持続可能なものにしていけたら一番よいですね。

中竹:欲張りすぎずというのが品があっていいですよね。ジンテックの持つ誠実さというか、礼儀正しさというか。根底で大事にしてきたものを、誇り高く発信していってほしいと改めて思います。

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